浦和地方裁判所 平成7年(わ)561号 判決
一
被告人
(一)本店所在地
埼玉県浦和市田島九丁目一二番一〇号
法人の名称
白石工業株式会社
代表者の住居
埼玉県大宮市大字片柳一四六四番地の一
代表者の氏名
白石幸四郎
(二)本籍
埼玉県大宮市大字片柳一四六四番地の一
住居
埼玉県大宮市大字片柳一四六四番地の一
職業
会社役員
氏名
白石幸四郎
生年月日
昭和七年一二月二一日生
一
罪名
法人税法違反
一
裁判所
浦和地方裁判所第三刑事部
一
裁判官
小池洋吉
一
出席検察官
渡邉元尋
一
宣告の日
平成七年九月二五日
一 判決主文
被告会社白石工業株式会社を罰金五〇〇〇万円に、被告人白石幸四郎を懲役一年二月に処する。
被告人白石幸四郎に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
一 罪となるべき事実の要旨
被告人白石工業株式会社は、埼玉県浦和市田島九丁目一二番一〇号に本店を置き、建築工事の請負等を営業の目的とする株式会社、被告人白石幸四郎は、同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人白石幸四郎は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、外注加工費の架空若しくは水増し計上し、労務費の架空計上などの不正な方法により所得を秘匿した上
第一 平成二年六月一日から同三年五月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が三億四七二〇万二一五一円であったのにもかかわらず、同年七月二三日、埼玉県浦和市常盤四丁目一一番一九号所在の所轄浦和税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億七六六四万八八〇九円でこれに対する法人税額が六五二八万二五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億二九二四万二〇〇円と右申告税額との差額六三九五万七七〇〇円を免れ
第二 平成三年六月一日から同四年五月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が三億五五八五万一九〇七円であったのにかかわらず、同年七月二七日、前記浦和税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億四七二九万四九二二円でこれに対する法人税額が五四一三万三七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億三二三四万二六〇〇円と右申告税額との差額七八二〇万八九〇〇円を免れ
第三 平成四年六月一日から同五年五月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が二億八四〇七万三〇〇二円であったのにかかわらず、同年七月二一日、前記浦和税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億三〇〇八万六二八円でこれに対する法人税額が四七六三万二一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億五三七万九五〇〇円と右申告税額との差額五七七四万七四〇〇円を免れ
たものである。
一 適用した罰条
(一) 被告会社白石工業株式会社
法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項、平成七年法律第九一号附則二条一項本文による改正前の刑法四五条前段、四八条二項
(二) 被告人白石幸四郎
法人税法一五九条一項、平成七年法律第九一号附則二条一項本文による改正前の刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、二五条一項
一 量刑の事情
本件は、被告人白石幸四郎(以下被告人白石という)が、その経営する被告会社白石工業株式会社(以下被告会社という)の法人税の確定申告に際し、平成三年五月期から同五年五月期までの三事業年度にわたり内容虚偽の申告書を提出してその法人税を免れたという法人税法違反の事案であるところ、本件のほ脱税額は合計一億九九九一万円余りという巨額であり、そのほ脱率も五四・五パーセントという高い割合であるから、それ自体まことに悪質というほかはない。
被告人白石は、被告会社の取締役であった高橋秀作の、得意先への接待費等として費消する金額が余りに増加して交際費名目で申告できる程度を越えたため、架空の労務費や外注費を計上して、負担すべき税額を減少させ、合わせていわゆる裏金を作ろうともしたというものであって、つまるところ自己の利欲を図ったと言えるその自己中心的な動機には同情の余地はない。
本件の犯行態様を見ても、被告会社における労務費、外注費等を架空計上するため、被告人白石において部下に架空の労務者支給明細書を作成させ、また、複数の者に依頼して架空外注費のための請求書、領収書を作成して貰うなど、その手口は積極的かつ計画的で、巧妙でもあるからまことに悪質と言え、また、被告人白石においては、会社と個人を区別せず、被告会社の経理につきまことにルーズな態度で臨んでいたことが本件犯行の遠因となった事情も窺えるから、健全かつ適正な経理に背馳するその経営態度にも憂うべきものがあると言うべきである。
かかる犯行が横行するときは、国家財政を危殆に瀕せしめるおそれがあると共に、国民の納税意欲を減退せしめ、ひいてその規範意識を揺るがして国家の存立をも脅かしかねない恐れがあるから、被告人白石にごく古くはあるが、長期の服役を伴う懲役前科三犯、罰金前科三犯の前科があって、その規範意識の鈍麻も窺われなくはないことを合わせて考えると、被告人白石及び被告会社の刑事責任には重いものがあると言うべきである。
しかしながら、他方、被告人白石は、本件の査察段階から査察官らに協力して事案の解明を助け、終始事実を素直に認めて深い反省の情を示しているうえ、今後は前記のような経理態度を改める旨を誓っていること、被告人白石が前記の犯罪歴から立ち直るべく、埼玉県に転居して、以後長年の努力を重ね、やがて多数作業員を擁する会社経営者としての地歩を築いたことは、同被告人の努力の結果として評価すべきであると共に、同被告人はその間、多数刑余者の雇い入れ等を通じ受刑者の更生に協力したとして感謝状を受けてもいることは、社会への貢献のあった事実として認めるべきであること、被告会社は、本件が新聞等で報道されると共に、その後、本件につき修正申告を行い、本税分の内二億七〇〇〇万円余りを既に支払ったほか、ほかにも延滞税・重加算税等多額の支払いを余儀なくされるから、これらにより被告会社は実質的な社会的制裁を受けたとも言えること、被告人白石の服役は、その多くの従業員らの生活に甚大な影響を及ぼすであろうことなど被告人白石及び被告会社に有利ないし酌むべき事情も認められるので、以上一切の情状を総合考慮のうえ、被告人白石及び被告会社に対し主文掲記の刑を量定したうえ、被告人白石に対しては、社会内における更生の機会を与えるを相当と思料し、その刑の執行を猶予することとした次第である。
(裁判長裁判官 黒瀬宣輝 裁判官 小池洋吉)